会社売却の相場ってどのくらい?
うちの会社はどのくらいで売却できるのかな?
会社売却を考えているが、正直価格次第。だからまずは相場を知りたい。
日本では、まだまだ会社売買の文化は根付いていない。
そのためか、それに関する情報も少ないのが現状だ。
今回は、2015年起業して2020年に売却した経験がある私が、会社の売却価格の目安を中心にM&Aについて解説していく。
はじめて会社売却を考えているといった方には十分参考になるはずだ。
会社売却価格の相場は年間利益の5倍

おおよその目安ではあるが、会社や店舗の売却価格は利益の5倍となっている。
あくまで目安だが、M&A市場ではこのような相場感で取引されている。
どんな要因で会社売却価格は変動するのか?
大きく分けて4つの要因で会社価格は変動する。
その4つの要因とは、産業分野、資産・負債、業績、買収する会社の買収理由で変わる。
先ほど紹介した、会社売却の価格の目安は今期、もしくは前期の利益額から算出するといったが必ずしもそうでない。
仮に、前期は-100万円だとしたら、会社売却価格は-500万円となりこちらが支払わなければいけなくなる計算だ。
だから、一概に利益から出される目安の価格だけでは高いか、安いか、妥当かという判断はできない。
その価格を変動させる4つの要因を一つ一つ解説していこう。
要因1:産業分野
簡単に言えば、何を商売にしているのか。
飲食店なのか、小売業なのか、製造業なのか。
これで売却価格が変わる理由は、これから伸びていく産業なのか否か。
私が売却した会社は、サービス業でパーソナルジム2店舗。
しかも、FC店舗もあるのでそこからの収益もある。
一般的には、これから健康産業が伸びてくるといわれているので、比較的買い手もつきやすく財務諸表上の資産価値よりも高く買収してもらえた。
このように、何の会社なのかでも価格は上下する。
要因2:資産・負債
これはなんとなく、わかってもらいやすいと思う。
会社の資産と、負債のバランスは売却価格に大きく関与する。
例えば、長期未払金が1億円あっても、自社ビル持ちで資産価値が20億円という場合、負債だけみると1億円の負債がある会社となるが、会社全体でみると、20億円自社ビルという固定資産があるのでこの場合は高値交渉に持っていけるだろう。
ここで気を付けてほしいのが、売却価格の目安が業績的に利益の5倍だからといって、目ぼしい資産があるにも関わらず、この目安で交渉すると損をすることもある。
だから、売却希望価格を提示するときは、希望価格以上の資産が会社に無いのかしっかり確認して提示しなければいけない。
要因3:業績
業績は分かりやすい。
一般的にM&Aは、今季の業績、前期、前々期の決算書を買収希望の企業に提出することが一般的。
業績は、伸びているのか?横ばいか?下降なのか?
またそれはなぜなのか?
財務諸表を見ていけばわかること。
一般的には、もちろん業績が伸びている会社の方が高値で売却しやすい。
要因4:買収する会社の買収理由
実はこれが非常に重要。
買収希望の会社の現状を手助けするような商品・サービスを扱っているなど、買収する側の事情次第でも価格は変わる。
私の場合だと、買収先の会社はすでに健康関連の事業を行っていた。
しかし、行っている事業がフィットネスではなかったので、すでにノウハウのある会社を買いたかったのだと思う。
そうなると、ある程度の価格交渉はできるだろう。
赤字や現状負債が多い会社は売れない?
もちろん売りにくさはあるが、事情によっては売れる。
会社売却サイトなどを見てみるとわかるが、結構赤字企業、債務超過企業も売買成立している。
肌感覚、M&Aの半分くらいはそうなのではないのかといった感じだ。
だから、売れないということはない。
先ほどの例のように、赤字でも先行投資によって赤字になっている場合もあれば、単純に売れなくなって赤字になっている場合もある。
同じ赤字でも、先行投資による赤字だと未来は明るい。
また、現状業績が悪かったり、負債が多くても、買い手企業がすぐにでも欲しいノウハウを持った会社であれば、現状の業績、負債はある程度飲んでもらえるケースもある。
このように、会社が売れるか売れないか、売却価格はどうなるのかというのは様々な要因が関与する。
ただし、平均してみるとやはり売買成立が落ち着く価格は、利益の5倍といったところ。
無料でできる会社を高く売却する方法
高く売れる会社にするためには2つの事が重要になる。
1つは、買いやすい会社にしておく事。
もう一つは、より多くの買い手企業の目に留まること。
この2つが、会社を高く売るうえで重要で、かつ無料で出来ることだ。
これらがどういうことか詳しく解説する。
高く売却するために1:買いやすい会社にしておく
現在のオーナーがしている仕事を他の社員に任せておく事、そして財務諸表、労務関係書類、諸契約書をしっかり手元にそろえておく事。
会社を売却するということは、基本的にはオーナーがその会社から抜けて買収企業に渡ること。
だから、その会社にはこれまでのオーナーがいなくなる。
オーナーしか知らない仕事があると買い手としては困る。
また、買収企業が知りたい情報をしっかりいつでも提出できるようにしなければ、交渉に時間がかかり、他の企業を買うかもしれない。
だから、この2つは高く売るためにも、しっかり売り抜くためにも重要な事。
よくありがちな中小零細企業の例
オーナーであり社長である人間が、お金の管理を全て行っており、いざ売却となるとその会社内にお金の管理ができる人がいない。
また、書類管理がずさんで中々求められた書類が提出できない。
このような状態だと有利に交渉を進められないので、買い手企業に価格面から押し込まれることになる。
だから、これらは高く売るためにも、安く買われない為にも重要事項。
高く売るために2:より多くの買い手の目に留まるようにする
まず、1社としか交渉していないことがわかると大分足元を見られる。
買い手が自分たちしかいないとわかれば、当然そうなる。
また、多くの買い手希望の会社の目に留まると、その分買い手として手を上げる会社も多くなるだろう。
様々な事情を持った買い手と交渉して一番高く買収してくれるところを自分で選ぶことができる。
会社売却についてまとめた記事もあるのでそちらも参考にしてほしい。
会社売却参考記事
より多くの会社と交渉することが重要になるのだが、一体どのようにして買い手の目に多く留まることができるのだろうか?
それは、買い手が集合しているところに自社の売却情報をながすことだ。
具体的には、
- 各管轄の商工会議所の事業継承センター
- ビズリーチ・サクシード
- 事業継承センター
- M&Aナビ
- M&Aキャピタルパートナーズ
- みどり財産コンサルタンツ
これら無料で登録できるところに全て登録しておくことだ。
特に、ビズリーチ・サクシードは日本でも有数に活発にM&Aが行われているプラットフォームだ。
実際に私もここに一番最初に登録した。
現在の会社売買の多くはネット上から始まっている。
たしかに各サイトに登録する手間はあるが、これをしないということは、多くの買い手を逃しているといっても過言ではない。
会社売却の注意点

デューデリジェンスとロックアップには細心の注意を払うべき。
なぜなら、会社売却時にデュ―デリジェンスで、会社売却後にロックアップに苦しむことが多くなるのではないかと思われるから。
ここからは、会社売却の注意事項となる、“デュ―デリジェンス”と“ロックアップ”について解説する。
会社売却前の注意点:デュ―デリジェンスとは?
デュ―デリジェンスとは買い手が行う、買収先の資産算定の作業。
M&Aにおいて実は価格交渉よりも、このデュ―デリジェンスが一番の天王山になる。
これがスムーズにいくかどうかで、結果売却価格に影響するから。
特にこのデュ―デリジェンスの注意点としては、求められた資料を速やかに手渡すこと。
これを渋る会社もあるというが、実際売却するにはいずれ手渡さなければいけない資料ばかりだ。
また、NDA(秘密保持契約)をあらかじめ結んでから、手渡すので情報が外に漏れることはない。
これに協力しないと、買い手から何か隠したいことがあるのではないかと余計な疑いをかけられ、最悪、基本合意まで行っていても、破談になる可能性もある。
だから、売却前はスムーズにデュ―デリジェンスに協力しよう。
会社売却後の注意点:ロックアップについて
ロックアップとは、売却後も一定期間拘束されること。
買い手からすると、前オーナーが急にいなくなるのは不安。
だから、あらかじめ多くのM&Aでは最終合意書にこのロックアップの事項が盛り込まれる。
しかし、過度なロックアップには注意だ。
特に、売却後も多くの仕事を任されそうなうえに、無報酬もしくは低報酬の場合。
せっかく、売却して、売却益を手に入れ自由になったと思ったらこれで痛い目に合う人も多いのでは?
買い手から、ロックアップを断りたくなるような状況を作る方法をお伝えしよう。
一言で言えば“口出し”だ。
ロックアップといえば、拘束だが言い換えれば、そのまま任された業務を継続してもいいともいえる。
そこで、業務上、会社にとっていいことであれば意見という名の“口出し”を行っていいことになる。
もちろん、自己の利益の為でなく、しっかり会社にとっての利益になるための意見でないといけないが。
自分が過度なロックアップだと思ったら、売却後すぐに、短期間で大量の意見という名の“口出し”を行う。
買い手からすると、なんの経営権もない元・オーナーに大量に口出しされるのは、何か煙たい感じがするのだ。
自分がお金を出して買ってオーナーになったのに、まだ口出しするのかという感じ。
しかも、内容が会社にとっていいことだけに、批判・反論もしづらい。
そうなると、買い手から次第に距離をとってくる。
契約上のロックアップ期間であっても、実質フリーになる。
ただし、本当に過度なロックアップの場合の時にしかしてはいけない。
しっかり時間をかけて引継ぎをしなければ、会社が立ち行かなくなる恐れがある場合は、それは必要なロックアップだ。
私がかけられたロックアップ
私の場合、初年度無報酬(翌年以降は報酬月額7万円の予定)でロックアップをかけられた。
私が売却した会社は、私自身が起こしたものだから、買い手としてはそうでなければ心配だったのだろう。
しかし、会社で行う仕事の中で、私でなければできない仕事は皆無にしておいた。
それを買い手は少しづつ気付いてくれたものの、初年度無報酬という契約なので、ある程度働かせて、翌年度以降のロックアップ契約を行わない雰囲気を醸し出してきた。
だから、私は、早いうちに短期間・大量の会社の利益になるような口出しを行った。
買い手からすると、わかっていることをわざわざ大量に言われるのは、腹の虫がおさまらない感じがするのだ。
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